「転職したものの、毎日が既存製品の仕様変更や改良設計ばかりで、エンジニアとしてのポートフォリオに書ける実績が弱い…」
そんな悩みを抱える20代の機械設計エンジニアは少なくありません。
結論から言えば、要素開発や製品開発につながる“種”を日々の業務の中から見つけて実行することで、短期間でもポートフォリオの中身を厚くすることは可能です。
ここでいう「ポートフォリオ」とは、デザイナーの作品集のようなものではなく、エンジニアとして実際に関わった案件や成果の“記録と証明”のことです。小さな改良であっても「どう工夫し、どう成果につながったか」を積み上げれば、立派なポートフォリオとなり得ます。

筆者自身も、精密工学科を卒業後に半導体製造装置メーカーで17年、さらにX線分析装置メーカーで3年、通算20年以上CAD設計の現場を経験してきました。
既存設計ばかりの時期をどう乗り越え、開発経験へとつなげるかを痛感してきた立場です。
この記事では、明日から動ける具体的な方法を、初心者でも理解できる形で紹介します。
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スキルが広がらない日々にどう向き合うか

20代で転職を果たしたものの、「また仕様変更や改良設計ばかりで、新しいチャレンジができない」という悩みはよく耳にします。
- 毎日がルーティン化してスキルが広がらない
- 新規開発に携わるチャンスが少なく、将来が不安
- 転職活動時にアピールできる材料(スキル・実績)が弱い
このような不安を抱えながら30代を迎えると、「キャリアの停滞」や「市場価値の低下」につながりかねません。
20代での経験が限定的だと、30代以降に任される大きな開発案件で苦労します。
なぜなら、企業は30代のエンジニアに対し「チームを率いる力」や「新規開発の推進力」を期待するからです。
例えば、仕様変更だけを5年間続けたエンジニアと、小規模でも新規開発を経験したエンジニアでは、採用面接での評価は大きく変わります。
だからこそ、日常の業務の中から「開発につながる経験」を意識的に積み上げる必要があるのです。
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製品理解を深めることで開発に近づく

開発案件を任されるエンジニアになるためには、まず「自社製品を誰よりも深く理解する」ことが大切です。
表面的に図面をこなすだけでは「改良要員」に留まってしまいます。しかし、機能の本質を理解し、改善提案できるエンジニアは、自然と開発案件に声がかかる存在になります。
思考展開図を描いて理解を深める

ここで役立つのが「思考展開図」です。
例として、簡易的な3Dプリンタを考えてみましょう。
- 要求機能 → 材料を積層して立体を作る
- 機能要素 → 造形データを入力する、材料を供給する、材料を成形する(熱で溶かして材料を押し出す)、X-Y方向に移動させる、Z方向に積み上げる、積層を安定させる、造形物を取り出す
- 機構要素 → スライサーソフト・制御基板、フィラメントスプール・エクストルーダ、ホットエンド・ノズル加熱、ステッピングモータ・リニアガイド・ベルト駆動、ヒートベッド・冷却ファン、マグネットベッド・ガラス板
- 全体構造 → 熱溶解積層型3Dプリンタとして完成
こうした分解思考を繰り返すことで、日々の改良設計も「製品の本質理解」という開発に直結する経験に変わります。
過去トラブルから学ぶ
さらに、自社製品の過去トラブルは最高の教材です。会議議事録や先輩エンジニアから聞き取りを行うと、改良設計の背景にある「本当に解決すべき課題」が見えてきます。
多くの場合、開発とは「過去のトラブルを再発させないための大胆な改良」にほかなりません。

ここでAさんの事例を紹介します。
Aさんは自社製品の3Dプリンタで、造形時に割れやヒビが入るトラブルがあると聞きました。原因を調べると、造形材料であるフィラメントが早く冷えて固まる際に収縮する力が強すぎるためでした。

そこでAさんは、フィラメントの収縮を抑えるため、周辺温度を一定に保つヒートチャンバーを新規に開発することになりました。
結果的に製品の信頼性が大幅に向上し、自らのポートフォリオに「開発案件としての実績」を刻むことができました。
チャンスを掴む行動と心構え

製品理解を深めた後は、自ら動いて開発案件のチャンスを掴む姿勢が不可欠です。
自ら立候補して経験を得る
「嫌な仕事(仕様変更や改良設計)も引き受けるから、その分開発案件も挑戦させてください」と積極的に発言すること。
こうした一言が、次のステップを掴むきっかけになります。

ここでBさんの事例を紹介します。
Bさんは仕様変更設計として、3Dプリンタの筐体材料の変更を検討する仕事を担当していました。
正直つまらない業務でしたが、ちょうど次世代機の開発プロジェクトが立ち上がろうとしていました。

Bさんは「材料変更の仕事もしっかりやるので、その分次世代機の開発にも参加させてください」と上司に立候補しました。
結果、次世代機の主要部品の開発担当に抜擢され、大きな経験を積むことができました。
妥協しない設計姿勢を持つ
開発案件では、コストや納期のプレッシャーから「妥協して仕様を下げる」よう求められる場面もあります。
しかし、問題が起きた時に責任を負うのは設計者です。だからこそ、根拠を持って妥協を拒否する姿勢が評価されます。
また、FA機器の開発では民生品開発とは異なり、繰り返しの試作が難しく一度の設計ミスが大きな損失になります。そこで、コンセプト段階からリスクを洗い出すことが極めて重要です。

ここでCさんの事例を紹介します。
Cさんは装置で使う重要部品について、加工業者から「難削材のため公差を緩めてほしい」と要求を受けました。
しかし、これを妥協すると要求仕様を満たせなくなるリスクがありました。

Cさんは「こうすれば加工可能」という代替手段を示しながら、粘り強く説明。
最終的に当初の公差を維持したまま加工を実現でき、製品性能を守ることができました。
協力者を巻き込んで挑戦を形にする

新しい開発案件を一人で完結させることはできません。周囲を巻き込む力がカギになります。
各部門にとっての挑戦にする
- 加工業者 → 難削材や複雑形状の加工は挑戦になる
- 資材部門 → 新しい外注先の開拓は挑戦になる
- 製造部門 → 組立工程の刷新は挑戦になる
それぞれが「自分にとって価値ある挑戦」と感じられるように仕掛ければ、自然と協力体制が築けます。
反対勢力を動かす方法
社内には「リスクを取りたくない」という保守的な勢力もいます。
その場合は、相手の負担を肩代わりして否定材料を消すことが効果的です。面倒を引き受ける姿勢を示せば、反対は弱まり、協力を得やすくなります。

ここでDさんの事例を紹介します。
Dさんは、組立工程で反対の多い改善提案を通すために、組立手順書をパワーポイントでスライドショー化し、さらに工程設計まで作成して現場に立ち会い、自ら実演しました。

また、調整に必要な専用工具を自作して提供するなど、徹底的にサポートしました。
結果、反対していた現場担当者も納得し、改善案が正式に採用されました。
転職市場を常に意識する

最後に忘れてはいけないのが「転職市場を意識し続けること」です。
転職そのものはリスクを伴いますが、転職活動はノーリスクです。
エージェントに登録して市場価値をチェックするだけでも、自分の立ち位置を把握できます。
例えば、今は改良設計中心でも「要素開発の経験を積みたい」と伝えれば、どの程度評価されるかを確認できます。これが自己分析となり、現職での行動戦略にもつながります。
転職活動はノーリスクです。エージェントに登録しておけば、自分の市場価値を定期的に確認できます。
👉 おすすめの行動
- 今すぐ転職する予定がなくても、転職エージェントに登録して求人やフィードバックをチェックする
- 自分の経験がどの程度評価されるか知ることで、現職で伸ばすべきスキルが見えてくる
✅ 「今後のキャリアを真剣に考えたい」方は、大手転職エージェント(リクルートエージェント、マイナビエージェント、JACリクルートメントなど)に無料登録して市場価値を確認しておきましょう。
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まとめ
本記事では、20代の機械設計エンジニアが「改良設計ばかりでキャリアが伸びない」という悩みをどう克服し、30代につなげていくかを解説しました。
- 製品理解を深め、思考展開図や過去トラブルから学ぶ
- 自ら立候補し、妥協しない姿勢で開発案件を掴む
- 協力者を巻き込み、挑戦を形にする
- 転職市場を常に意識し、自分の市場価値を把握する
これらを実践することで、「転職したけれどポートフォリオが弱い…」と悩むエンジニアが、確実にキャリアを前進させることができます。
未来の30代を後悔しないために、今日から一歩を踏み出してみてください。
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